2010年9月13日月曜日

9は苦にあらず


少子高齢化に悩むのは何も日本だけじゃありません。台湾も晩婚化、晩産化が進み昨年度は出生人口が約19万人、人口1000人あたりの年平均出生率は8.29%。一人の女性が一生で産む平均値である合計特殊出生率は1を割り込み0.9人。なんとこの数字は世界最低というから日本より深刻なのは確か。このままでは2017年で人口が減少に転じ始めるそうです。あまりに少子化が進んでいるので過疎化した地域では生徒1人に先生が5人の小学校があるとか、産婦人科医が美容外科を兼任しているとか、笑っちゃうような笑えない話もいっぱいあるようです。

政府も頭を抱えていて、何とか歯止めをかけようと従来各市町村で行われていた児童手当の支給を一律で国から支給する論議が進んでいてどこかの国の政府と考えることは同じ。低負担低福祉の国だけに財源確保で増税があるのでは?と、国民も喧々諤々言い合っているようですが妙案はトンと出てこないというのが現状。

まあ原因はといっても、つまるところ適齢期の若者が結婚しなくなった上に、夫婦共働きが増加し、結婚しても子供は1人というのが定番化しつつあるということ。旧正月に大家族でレストランで食事するという中華社会の伝統的な風景もそのうち見られなくなってしまうかもしれません。悪いことにこの国の離婚率が出生率と反比例してどんどん増えていて、こちらもアジアでは韓国を抜いて1位になったようであります。
「このままじゃ大陸は武力使わなくても台湾人なんていなくなるから待ってればいい」と某新聞もやけっぱちな記事を書いたりしていたとか。

そんな憂慮すべき深刻な事態の真っ只中、内政部の統計によると去る9月9日午前0時から午後5時までに台湾全土で婚姻届を出したカップルがなんと6063組を超えるという奇跡のような事態が発生。現在1日平均は343組というから一気に20倍!
これは若者たちの大規模な集団見合いが成功した?はたまた多額の結婚祝い金支給の法案が通過したのか?それとも何か精力剤入りの食品が大流行したとか?いろいろ邪推してしまうが、実は今年は中華民国暦で99年。9月9日は民国99年9月9日とたまたま9並びの日に当たります。
中華民国暦というのは辛亥革命の西暦1911年を民国元年として数えるので、よく台湾旅行のおみやげで賞味期限が10年もたったもの買わされたなんて誤解する日本人もままいるようです(笑)

9という数字は中国語の発音で「久」と同じ。9999の並びは「久久久久」ということで「幸福長長久久(幸せが末長く続くように)」の縁起を担いだのが事の真相というわけでした。
縁起を担いだり現世利益の信心に努めるのはこの国の人たちの常、こんなことで出世率増加につながるんなら、政府も下手な政策を考えるより、案外、こじ付けで〇〇の日なんて良くある祝日を考えたほうが即効性があるのでは?
日本じゃぞろ目の年号は11年後か。33年3月3日、産産産産の一大キャンペーンと言うのはどうかしらん?

2009年11月4日水曜日

球場内外の懲りない面々


假球とも放水とも言う漢字がシーズンオフの台湾棒球(=野球)を締めくくる恒例の季節となりました。
漢字の意味するところはいうまでもなく八百長のこと。

今年の八百長事件は20年目を迎えた台湾球界の創設メンバーでもあり台北をフランチャイズとする人気球団の兄弟エレファンツが主体となっているだけに衝撃は大きく、メジャーでも活躍した曹錦輝、西武ライオンズに在籍し日本のファンにもおなじみの張誌家らの人気選手も事情聴取されるなど、連日台湾メディアのニュースをにぎわせているような次第。
兄弟以外にもすでにLa New,興農球団にも捜査の手は広がりすでに賭博の主宰者6名が逮捕、4名の選手が関与を認め、事情聴取される選手は30名にもおよびそうと拡大の一途をたどっています。
11月3日には事件の関与を疑われた元阪神の中込伸前監督が桃園空港で帰国寸前に拘束され手錠をかけられ板橋地検に連行(本人は潔白を主張、すでに保釈中)されてしまい、ついに日本の野球人までが巻き込まれるという最悪の事態に発展してしまったのであります。まさに馳星周の小説『夜光虫』を地で行くような世界ですが、恒例といったのは昨年もシーズンオフに米迪亜ティーレックスというチームが球団ぐるみで八百長をしていたのが発覚したばかりで、球団も今シーズンから4球団まで減って出直したばかりだったので、“またかよ”とこの手のスキャンダルには慣れっこの台湾の人たちでさえあきれるわけです。

20年の職業棒球史を振り返っても96年に選手の監禁脅迫事件(口の中に拳銃を突っ込まれて八百長を強要されたそうな)、97年には人気球団の時報イーグルスが主力選手による八百長が発覚し球団消滅に追い込まれ、99年には疑惑のあった味全ドラゴンズほか三商タイガースが経済的理由で撤退したことにより2リーグ11球団が1リーグ6球団に統合され再スタート、そして前述した昨年の米迪亜ティーレックスの事件と、本当に恒例といってもいいぐらい連続してスキャンダルに見舞われてきました。
昨年の事件は、経営難で身売りした誠泰コブラズを買収したのが実は暴力団だったという笑えないオチで今シーズンはいよいよ4球団まで減ってシーズン前はリーグ自体存亡の危機と言われたものでした。
ところが、ファンの献身的な応援、特に馬英九総統夫人が台湾シリーズ(前後期優勝チームの決定戦)で兄弟の応援に駆けつけるなどの話題もあって人気回復したか、と思われていただけに、もはや救いがたい状況に陥ち入った感があります。

八百長→人気凋落→球団の収入減→選手の給与カット→八百長とまさに負の連鎖がなぜ繰り返されてしまうのか、誰だってこんな簡単な図式には気づきそうなものですが、もうこれは華人社会の博打好きのDNAがなせる業、わかっちゃいるけどやめられないとはこのことなんだろうなあ。
台湾には公営のギャンブルはこのDNAゆえか為政者からは禁じられており、一時は日本からのパチンコが人気になったことがあったけど射幸心をあおるということでほとんどの地区で条例で禁止されてしまっている状態で確かにガス抜きできない中、プロスポーツが賭博の温床になるのはある意味やむを得ないのかもしれません。

もうひとつの側面が、台湾に、いや中華社会全体に巣くう黒社会の存在。もともと反清復明を標榜する秘密結社に端を発する“帮”が政治、経済の中枢にも入り込んだ歴史を持つだけに一朝一夕には消えることがない。特に台湾では地縁血縁が深く、長く国民党政権と持ちつ持たれつの関係が続いてきただけにその根は深いようです。今回の八百長を仕組んだのもすでに逮捕された胴元の証言から台湾の三大暴力団(竹聯幇、四海幇、天道盟)のひとつ四海幇に連なる雨刷グループの犯行ということが判明しています。彼らは本当に日本のような単なるアウトローといったレベルにとどまらず、政界や経済界、メディアにいたるまで入り込んでいて今日的にも常に国家的な問題として繰り返し浄化が叫ばれているもののとんとその実効があがったためしはないといえましょう。

このように台湾の八百長事件は単にプロ野球球界だけの現象ではなく、台湾社会全体の問題でもあるといっても過言ではないでしょう。このままでは本当に台湾のプロ野球も消滅の道をたどるかもしれません。国際的にも才能ある選手たちを輩出してきた野球文化の国ですから、このままでは現役の選手たちはじめ将来を夢見る野球少年たち、多くのファンたちの夢を摘む結果になりかねません。
なんとか、この危機を克服し、健全なプロリーグの再編を祈らざるを得ないのですが…。

2009年8月14日金曜日

莫拉克大暴れ


8月8日、台風8号(モーラコット=莫拉克)が台湾を襲い、高雄県を中心とした南部および東部に猛威をふるってから1週間、徐々に明らかになる被害の実態は酷くなるばかり。現在死者107名と報じられているが高雄県の小林村を襲った土石流では約400人近い住民が今も生き埋めになっているという観測もあり、この50年で最悪の惨事になってしまったようだ。
何といっても今回の降雨量のすごさ、雨の多い台湾の1年の平均降雨量がわずか2日間に集中したという。
台東の知本温泉の川沿いに建つ8階建てのホテルが激流で倒壊したニュース映像は衝撃的だった。

台湾は地形上台風の通り道なので、例年、出来立てほやほやの勢いがある奴が何度か襲来する。
実際駐在時代に自分が住んでいたアパートで、5階の部屋だったのにもかかわらず水がガス管を逆流して室内にあふれて、一晩中必死で水をくみ出した経験がある。
そんな国情ゆえ台風が接近すると会社も学校もすべて休み(コースがそれて晴天になって思わぬ休暇になることも多いが)、いってみれば台風慣れし、その心構えもできている台湾の人達も今回の被害にはさすがに声を失っている。

現在3万人の軍の救援隊が活動しているが、1万を超える人たちが家を失いいまだに救助を待ち続けている状況だという。
こんな悲惨な状況に対して政府の対応の遅れに批判が集中している。
当初から大きな被害が予測され、日本、アメリカ、シンガポール等からも救援隊派遣の打診が行われたが、政府がこれを断ったことに端を発し、救援ヘリの投入も遅々として進まず12日に現地視察に入った馬英九総統は行く先々から住民に罵倒されてしまった(写真は海外プレスの取材中に被災民に詰め寄られるイケ面総統)。しかも多くの人が救援を待つ中、総統視察到着時に警備の都合で救援ヘリの活動を一時的に止めたり、国防部長が救援隊の“閲兵”で4時間近くも隊員を待機させたりして憤激を買う始末。
“アメリカ、日本の援助を断ったのは、中国の顔色をうかがっているからだ!”と大陸融和派の外省人総統の政治的な立ち位置にまで批判の矛先は向かってしまった。まずいことに先月末には胡錦涛首席から国民党主席兼任に対して祝電をもらったりしているものだから、痛くない腹を探られても仕方がない。
あわてた総統は“総統府全職員の1日分の給与を義捐金に充てる”と発表したが、これがまた被災者の心情を逆なでする結果になってしまう。
思えば、ブッシュ前大統領がハリケーン“カトリーナ”の対応のまずさから急速に支持を失ったこともあり、馬政権も致命傷になりかねない様相を帯びてきた。

台湾大地震からちょうど10年、ふたたび台湾を襲った災厄に日本の最大限の援助は不可欠だと思うが、肝心の日本政府も8月30日の総選挙を控えて政府の体をなしていない。しかも先日の山口や、大分の土石流被害の復旧もまだまだ始まったばかりである。なんとか民間レベルでも被災地への援助ができないものだろうか?