2009年8月14日金曜日

莫拉克大暴れ


8月8日、台風8号(モーラコット=莫拉克)が台湾を襲い、高雄県を中心とした南部および東部に猛威をふるってから1週間、徐々に明らかになる被害の実態は酷くなるばかり。現在死者107名と報じられているが高雄県の小林村を襲った土石流では約400人近い住民が今も生き埋めになっているという観測もあり、この50年で最悪の惨事になってしまったようだ。
何といっても今回の降雨量のすごさ、雨の多い台湾の1年の平均降雨量がわずか2日間に集中したという。
台東の知本温泉の川沿いに建つ8階建てのホテルが激流で倒壊したニュース映像は衝撃的だった。

台湾は地形上台風の通り道なので、例年、出来立てほやほやの勢いがある奴が何度か襲来する。
実際駐在時代に自分が住んでいたアパートで、5階の部屋だったのにもかかわらず水がガス管を逆流して室内にあふれて、一晩中必死で水をくみ出した経験がある。
そんな国情ゆえ台風が接近すると会社も学校もすべて休み(コースがそれて晴天になって思わぬ休暇になることも多いが)、いってみれば台風慣れし、その心構えもできている台湾の人達も今回の被害にはさすがに声を失っている。

現在3万人の軍の救援隊が活動しているが、1万を超える人たちが家を失いいまだに救助を待ち続けている状況だという。
こんな悲惨な状況に対して政府の対応の遅れに批判が集中している。
当初から大きな被害が予測され、日本、アメリカ、シンガポール等からも救援隊派遣の打診が行われたが、政府がこれを断ったことに端を発し、救援ヘリの投入も遅々として進まず12日に現地視察に入った馬英九総統は行く先々から住民に罵倒されてしまった(写真は海外プレスの取材中に被災民に詰め寄られるイケ面総統)。しかも多くの人が救援を待つ中、総統視察到着時に警備の都合で救援ヘリの活動を一時的に止めたり、国防部長が救援隊の“閲兵”で4時間近くも隊員を待機させたりして憤激を買う始末。
“アメリカ、日本の援助を断ったのは、中国の顔色をうかがっているからだ!”と大陸融和派の外省人総統の政治的な立ち位置にまで批判の矛先は向かってしまった。まずいことに先月末には胡錦涛首席から国民党主席兼任に対して祝電をもらったりしているものだから、痛くない腹を探られても仕方がない。
あわてた総統は“総統府全職員の1日分の給与を義捐金に充てる”と発表したが、これがまた被災者の心情を逆なでする結果になってしまう。
思えば、ブッシュ前大統領がハリケーン“カトリーナ”の対応のまずさから急速に支持を失ったこともあり、馬政権も致命傷になりかねない様相を帯びてきた。

台湾大地震からちょうど10年、ふたたび台湾を襲った災厄に日本の最大限の援助は不可欠だと思うが、肝心の日本政府も8月30日の総選挙を控えて政府の体をなしていない。しかも先日の山口や、大分の土石流被害の復旧もまだまだ始まったばかりである。なんとか民間レベルでも被災地への援助ができないものだろうか?