2009年2月28日土曜日

貰えるもんは貰っとけ


先週、またまた台湾、香港と回ってきたのだが、今回台湾で目に付いたのは店頭の“消費券使えます”の看板。しかもどこの看板も使えば割引で商品が買えるという表示があって、ディスカウントセールで消費マインドが高いうちに稼ぎたいという戦術が見て取れる。
この消費券、いうまでもなく日本の国会で議論の的となった定額給付金の台湾ヴァージョン。麻生政権がぶち上げた後、台湾でもすぐに追随した案が提案されたのだが、台湾の場合は決れば実施も早い、年明け18日からすぐに一般家庭一人につき3,600台湾ドル(約1万円)が配布された。

台湾政府の頭がいいのは、海外居留の人にも配布されること。現在は多くのホワイトカラーの働き手が大陸を中心に海外に出ている状況なので、彼らは外地で使えないわけだから当然持っていても仕方が無いので台湾に戻ったときに現金化したり、家族が使うことになる。これが意外とでかいらしい。冒頭にも書いたが、お店の方も売り上げを伸ばすチャンスと早速ディスカウントセールで使ってもらう作戦に出たが、与える側は色々と消費喚起で景気浮揚を考えてはいるものの使う側もさるもの、もう少し粘ればもっと割引率が高くなるとタイミングを読んで引っ張っているというもっぱらの作戦のようである。

しかし万事がアバウトな台湾だけに、受け取りの際(送られた通知書にしたがって学校や郵便局で受け取るとか)、資格を確認せずに多く渡したり、ごっそり大量の券が行方不明になったりする。一番やっぱり出たかと笑ったのはニセの券が早速出回ったそうである。いろいろとアンビリーバブルな事は多かったらしいが、日本と違ってもらえる物はもらうという意識が徹底しているので概ね皆喜んで使い方を考えているようだ。
この後、香港に寄ったのだが、香港人もニュースで見聞きして“日本や台湾で給付金が出るのに何故われわれは貰えないんだと”と不満たらたらだったw

確かに定額給付金は、こんなことで金ばら撒くならもっと使い道があるだろうと色々と議論はあるのだろうが、台湾のこのあっけらかんとした消費券騒動、お金に対するメンタリティの差があるとはいえ、景気への効果はさておきあながち悪いもんじゃないなと思ったりもしてしまうのであった。

2009年2月20日金曜日

日本と台湾の濃密な関係


昨年、台湾映画史上最高興行収入を記録した『海角七號』(魏徳聖監督/范逸臣、田中千絵、中孝介主演)が、香港、マレーシア、シンガポールに続き2月14日のバレンタインデーに中国でも公開された。
終戦時、台湾から帰還することになった日本人教師が、残してきた自分の恋人だった教え子に宛てたラブレターを題材に現代の台湾南部屏東を舞台にした地元の青年と日本人女性のラブストーリーだが、興行収益もさることながら昨年の各映画賞を総なめにし作品としての評価も高い作品である。
昨年11月、台湾を訪れた中国の最高位の政治家である海峡両岸交流協会会長・陳雲林に対して、台湾側はこの映画の公開を薦め映画を観せたところ、陳雲林は“大変いい映画で感動した”と言って帰ったのだが、後日前言を翻し「日本帝国主義時代を美化するもの」と中共中央の見解を述べるに至り台湾側を唖然とさせた。その節操のなさと硬直した発想は呆れるばかりだが、これによって中国での公開はほとんど絶望的と見られていたのだが60分以上のカットで何とか公開されることになったようだ。
どこがカットになったかは判らないが、日本時代のシーンが大幅にカットされたことは想像に難くない。そうで無かったとしても、歴史的に日本と台湾との微妙で濃密な関係や、なぜ台湾人が日本人に対して親日的な傾向にあるのかを理解できない中国大陸の人間たちにとってはウケることはないだろうなと思っていた。というか、この映画を観てなぜ台湾は反日じゃないのかということよりも台湾が中国の併合に反対する理由を感じ取ってほしいとひそかに願っていた。
結局、上海を中心に公開されたわけだが、中国のニュースサイトのレコードチャイナの記事によると成績は芳しくないとのことである。
ただし、その原因が作品の内容に対する評価ではなく、ノーカットの海賊版が既に廉価で出回っていてそれより高い入場料を払って映画館に観に行くわけが無いということだったことに思わず噴き出してしまった。

海賊版がすぐに出回ったことを考えると大陸の若者たちもこの作品は少しは支持されたのかもしれないが、日本と台湾の濃密な関係をどう思ったのか、ちょっと聞いてみたい気がする。