2008年8月5日火曜日

溢れるバイクから溢れる自転車へ


原油価格の高騰でガソリン代の値上げに悲鳴を上げているのは何も日本に限ったことではない。台湾は世界で一番ベンツの所持者が多い、と聞いたことがあるが自家用車の保有率は世界有数である。日本のように地下鉄や私鉄が張り巡らされているわけではないので、通勤の足として車を使う上班族(サラリーマン)は多いし、公共の乗り物といえばバスかタクシー、そして若者層を中心としたバイクの群れで朝夕の通勤時は決まって渋滞する。ここのところのガソリンの値上げで、新車の購入比率が対前年で30%近く落ち込んだそうである。
それにともなってマイカー通勤族がいっせいに燃費のかからないバイクに鞍替えして、バイクの売り上げはちょうど自動車分を補うかのごとく対前年30%増なのだとか。

いままでだって台北のバイクラッシュは一種名物のように凄まじく、台湾に訪れる日本人は皆一様にびっくりする。幹線道路の朝の信号待ちは何かバイクでデモやっているのかと錯覚するほどだ。訪台した日本明星(スター〉のインタビューでも、台湾の印象を質問されると大体が“バイクが多くて驚いた”と答えるものだから、私が駐在していた頃も“日本人は他に言うことは無いのか”とインタビュアーがかなりムカついていたのを覚えている。

ただでさえバイクがあふれているのに、マイカー組がこぞってバイクに鞍替えしたらと考えるとちょっと恐ろしいものがある。台北の空気汚染も北京ほどではないにせよ昔からひどかったが、バイクの排気ガスは今後ますます大気汚染、温暖化への社会問題を深刻化させることは間違いない。

ただし台湾でも環境問題に敏感になりつつあるのも他の国同様である。また数年前SARSが蔓延した記憶もまだ新しく健康被害への警戒心も高まっている。そこで若者を中心に最近ではバイクもやめて自転車の愛用者が増えだし自転車の売り上げは対前年65%アップと驚異的に伸びているそうだ。元々、世界最大の自転車メーカー「GIANT」がある国だったが、亜熱帯と言う気候的問題もあってあまり乗っている人は見かけなかった。ところがデザインも洗練され、日本で流行ることは何でも流行るお国柄だけに、BMXやスポーツタイプの自転車が人気になっているようだ。

ここ20年間で中国大陸の代名詞だった自転車の通勤風景はすっかり影を潜めたが、今度は台湾の代名詞が自転車の通勤風景になる日もそう遠い将来ではないかも知れない。

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