10月17日、JL657便で高雄へ行く。
10月とはいえなんといっても高雄は北回帰線の南側。純然たる熱帯に属しているのでやはり暑いのである。さすがに真夏のような強烈な日差しではないものの摂氏32度は下らない。
そんな熱帯の都市のど真ん中を、なんともいえぬ美しい大河が流れている。
その名も<愛河>。
日本統治時代は高雄川と呼ばれていたが、戦後になって蒋介石が宋美齢夫人の誕生日を祝し<仁愛河>と改名させ、それがいつしか<愛河>と呼ばれるようになって定着してしまったらしい。
ロマンチックな呼称にたがわぬように夜は川に架かる橋がライトアップされ、恋人たちが川べりの遊歩道をそぞろ歩く。最近では遊覧船で河を巡る<愛河>クルーズも人気があるそうだ。
いまでは高雄市民の誇りともいえる綺麗な河だが、つい何年か前までは東京の隅田川同様に工場排水や家庭用排水で汚染され、<愛河>という名にこれほど似つかわしくないというドブ川だった。熱帯だけに匂いも強烈で周辺の家では窓も開けられないほどだったという。それを市政府が何とか浄化をと音頭をとってやっと現在の姿まで回復したというわけである。
深夜の到着だったが、ホテルに荷を降ろしてさっそく<愛河>に会いに出た。5年ぶりの再会だったが七色のライトが漆黒の流れに溶け込み、変わらぬ美しさで迎えてくれた。