2009年1月11日日曜日

アジアの萌え分布図



ハノイに住んでいる知人のブログで、ついにベトナムにもメイドカフェが出来たという報告があった。
すでに本家の秋葉原では下火になりつつある感があるが、萌え現象のアジアへの伝播はまだまだ拡大しているようだ。
http://d.hatena.ne.jp/wakita-A/

台湾の“竹下通り”、西門町を休日に歩けばアキバ顔負けの本格的なメイド衣装の女の子たちが客寄せのチラシを配っているし、萌えの殿堂たる総合ビル「MOE MOEセンター」だってある。まあ日本文化が並行輸入される台湾ではもはや驚くにあたらないのかもしれない。日本のコミックスが人気がある韓国、香港、シンガポールあたりもずいぶん前からメイドカフェが登場し一部ニュースになっていたが、上海や今回のようなハノイのような一応の共産国家にもメイドカフェ(中国語では「女撲」と表記)が出来ている。いまや体制を超えて萌え現象は進出しているというわけである。“ご主人様”なんて概念は階級闘争的には打倒すべき発想なのではと思うのだが(でも首領様もいるわけだからね。女撲ならぬ民撲だし)。

気になって検索してみると、さらにマレーシア、タイにもメイドカフェはあるらしい。東へ行くとバンクーバーやロスにもあるようだ。恐るべし萌え思想。
しかしながらよくよく考えてみると、やはり中華系のコミュニティがある地域が主流を占めているので萌え思想は極東アジアの人たちに限定されているのだろうか?
どうもアジア西端の生息域はマレー半島まででそれより西のイスラム圏やヒンズー圏にはさすがに宗教観から萌え思想は理解しがたいのかw。フィリピン、インドネシアあたりではメイドは本ちゃんの職業だし、アニメのコスプレこそ流行しているが西欧社会ではそもそもメイド自体が発祥の地でコスプレでもなんでもない(当たり前か)。

そうはいうもののセーラー服も西洋から導入されたものだ。アニメ『セーラームーン』が海を越えて人気になって日本に来た白人青年が“日本の女の子は本当にセーラー服着ているんだ!”と感動していたという主客逆転したエピソードも聞いたことがあるので、これからは判らないぞ。エマ・トンプソンやエレン・バースティンがメイド服着ても当たり前だろうが、昔のダニエル・ビダルみたいな青い目の女の子がメイド衣装で“いらっしゃいませご主人様”なんて迎えてくれたらこりゃかなり萌えるね。

血みどろの戦いが続くガザの戦闘や、アフリカのソマリア内戦のニュースなんかに接していると萌え思想みたいな軟弱でお馬鹿な屈折したセクシャリズムにうつつを抜かすのは、はなはだ不謹慎なのかもしれないが、世界に萌え現象が広まりオタクが席巻すればもう少し世の中平和になるかもしれない。そういう意味では“萌え”はある面ユートピズムの一変種ととらえるのもあながち的外れでもないかも。

2008年10月26日日曜日

メモリー・オブ・台湾  高雄/愛河


10月17日、JL657便で高雄へ行く。
10月とはいえなんといっても高雄は北回帰線の南側。純然たる熱帯に属しているのでやはり暑いのである。さすがに真夏のような強烈な日差しではないものの摂氏32度は下らない。

そんな熱帯の都市のど真ん中を、なんともいえぬ美しい大河が流れている。
その名も<愛河>。
日本統治時代は高雄川と呼ばれていたが、戦後になって蒋介石が宋美齢夫人の誕生日を祝し<仁愛河>と改名させ、それがいつしか<愛河>と呼ばれるようになって定着してしまったらしい。
ロマンチックな呼称にたがわぬように夜は川に架かる橋がライトアップされ、恋人たちが川べりの遊歩道をそぞろ歩く。最近では遊覧船で河を巡る<愛河>クルーズも人気があるそうだ。

いまでは高雄市民の誇りともいえる綺麗な河だが、つい何年か前までは東京の隅田川同様に工場排水や家庭用排水で汚染され、<愛河>という名にこれほど似つかわしくないというドブ川だった。熱帯だけに匂いも強烈で周辺の家では窓も開けられないほどだったという。それを市政府が何とか浄化をと音頭をとってやっと現在の姿まで回復したというわけである。

深夜の到着だったが、ホテルに荷を降ろしてさっそく<愛河>に会いに出た。5年ぶりの再会だったが七色のライトが漆黒の流れに溶け込み、変わらぬ美しさで迎えてくれた。

2008年10月6日月曜日

中秋節はどんなことがあっても焼肉だぜい

中秋節(農暦8月15日)といえば中国三大節句のひとつで、正月に続く中華社会の一大イベントである。家族や親しい人が集まって月餅を食べたり麻雀したりというのが一般的な楽しみ方なのだが、こと台湾においてはちょっと独自の習慣がある。
何年か前の焼肉のたれのCMから端を発し、中秋節はバーベキューというのが全土に普及し今では無くてはならない台湾の秋の風物詩になってしまったのである(日本のバレンタインデーのチョコと同じですな)。家や店先の前で、マンションのベランダや屋上で、この日ばかりは台湾全土が肉を焼く煙で覆われてしまうといっても決して言い過ぎではない。スーパーでは1週間前ぐらいからBBQセットのコーナーが設けられ、炭が飛ぶように売れまくり、本当に老いも若きもこの日の焼肉パーティーを心から楽しみにしているのである。

2008年の(農暦は毎年変化する)中秋節は9月14日。このいまや国民の楽しみと化したバーベキュー行事に対して今年はなんと政治が介入してきたのである。
新総統となった馬英九が、こともあろうか排出二酸化炭素削減のため屋外のバーベキューを禁止するという条例をかざして規制措置をとってきた。環境問題を重視すると言うパフォーマンスは多くの国民の支持を得たのだが、“なにもみんなの楽しみに水をさすこたあ無いだろう”と国民にとってはKYとしか思えない布告に対しいっせいにブーイングが上がったのは当然だった。
公共の公園とかの場所の貸し出しは凍結され、総統自らがメディアで呼びかけたのだが、一般の庶民はどこ吹く風、止められるものなら止めてみろと多くの人が意に介せずにバーベキューの準備をしていたようだ。これがタイやビルマだったら大デモにエスカレートし一触即発の事態に発展するのは間違いないだろうw

ところが国民にとってはもっと大きな障害が待ち構えていた。今年最大の台風13号の襲来である。
台湾の台風はちょっと半端ではない。出来立てほやほやの強力なやつが容赦なく襲ってくる。道路は河と化し、倒れた樹木が道をせき止める。高速道路は下界から避難してきた車の臨時駐車場!となってしまうのである。
小生もこんなアンビリーバブルな事態を駐在時代にも何度か経験した。締め切ったマンションのサッシから水が溢れ、一方でガス管を伝わって雨水が容赦なく部屋に入り込み、一晩中浸水と戦ったことがある(5階なんだけど)。官の介入にてぐすね引いていた国民も自然の驚異には勝てず、恨みの雨の休日となってしまった。

みんなさぞかしがっかりしたのかな~と思っていたが、ところがどっこい。横殴りのあの強烈な風雨の中でも多くの人たちがバーベキューを強行したと台湾の知人も笑って電話してきた。YouTubeを見てみればあるわあるわw
こんなに苦労してまで焼き肉くいてーか!?
死者5人、行方不明10数人。多くの犠牲が払われながらもバーベキューは死守されたのであった。
あらためて台湾の皆さんの食い意地とパワーに脱帽である。