2009年2月20日金曜日

日本と台湾の濃密な関係


昨年、台湾映画史上最高興行収入を記録した『海角七號』(魏徳聖監督/范逸臣、田中千絵、中孝介主演)が、香港、マレーシア、シンガポールに続き2月14日のバレンタインデーに中国でも公開された。
終戦時、台湾から帰還することになった日本人教師が、残してきた自分の恋人だった教え子に宛てたラブレターを題材に現代の台湾南部屏東を舞台にした地元の青年と日本人女性のラブストーリーだが、興行収益もさることながら昨年の各映画賞を総なめにし作品としての評価も高い作品である。
昨年11月、台湾を訪れた中国の最高位の政治家である海峡両岸交流協会会長・陳雲林に対して、台湾側はこの映画の公開を薦め映画を観せたところ、陳雲林は“大変いい映画で感動した”と言って帰ったのだが、後日前言を翻し「日本帝国主義時代を美化するもの」と中共中央の見解を述べるに至り台湾側を唖然とさせた。その節操のなさと硬直した発想は呆れるばかりだが、これによって中国での公開はほとんど絶望的と見られていたのだが60分以上のカットで何とか公開されることになったようだ。
どこがカットになったかは判らないが、日本時代のシーンが大幅にカットされたことは想像に難くない。そうで無かったとしても、歴史的に日本と台湾との微妙で濃密な関係や、なぜ台湾人が日本人に対して親日的な傾向にあるのかを理解できない中国大陸の人間たちにとってはウケることはないだろうなと思っていた。というか、この映画を観てなぜ台湾は反日じゃないのかということよりも台湾が中国の併合に反対する理由を感じ取ってほしいとひそかに願っていた。
結局、上海を中心に公開されたわけだが、中国のニュースサイトのレコードチャイナの記事によると成績は芳しくないとのことである。
ただし、その原因が作品の内容に対する評価ではなく、ノーカットの海賊版が既に廉価で出回っていてそれより高い入場料を払って映画館に観に行くわけが無いということだったことに思わず噴き出してしまった。

海賊版がすぐに出回ったことを考えると大陸の若者たちもこの作品は少しは支持されたのかもしれないが、日本と台湾の濃密な関係をどう思ったのか、ちょっと聞いてみたい気がする。

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