2008年9月6日土曜日

鳥かごがなくなる? マカオ


この夏、嫌というほど見た建物はなんといっても北京の“鳥の巣”(人民体育場)だが、マカオを代表するカジノ『リスボア』(葡京飯店)は“鳥かご”とよばれ1970年に建築されて以来、38年もマカオのランドマーク的な建物として知られてきた。

マカオは中国返還以降、中国政府の江南デルタ経済特別区構想の下で東洋のラスベガス化が大規模にストラクチュアリングされており、ユダヤ資本のサンズ、ベネチアンの進出を皮切りに大型カジノが続々とオープンし凄いことになっている。昨年2度ほど取材でサンズを訪問したが24Hオープンの巨大カジノに大陸からの金持ちを満載したバスが次々と横付けされ、ばくち好きな中国人たちが目を血ばしらせながら「バカラ」や「大小」のテーブルに押しかける姿にドン引きした。

『リスボア』は従来のマカオのカジノ王スタンレー・ホーが経営する老舗だが、ラスベガスから進出した巨大なカジノ群の出現ですっかり霞んでしまっていた。しかしミスター・カジノの名をほしいままにしてきた大富豪が手をこまねいているわけが無い。『リスボア』に隣接して新しい『グランドリスボア』(新葡京)を昨年建設し(カジノは既に営業しているがホテルは今年中にオープン予定)対抗手段に打って出た。これがまたド派手な建物で世界遺産の多いマカオ旧市街の景観を著しく悪化させた、と個人的には思うのだが派手なら派手なほど金が舞い飛ぶのが中国クォリティというものなのかもしれない。

そしていよいよ『リスボア』本体も立て替える計画が進められていて、現在6社で設計のコンペ中だそうである。“鳥かご”として親しまれてきた外観を残すか残さないのか、6社の設計ではまったく排除したものと2分されているとのことである。
前回マカオに行ったとき、この旧い『リスボア』を覗いたが、昔の暗黒街の賭博場といった趣がなんとなく残っていて、高級娼婦なども人ごみの中を回遊していたり、背徳の殿堂といった隠微さが何ともいえず味があった。戦前の上海の『大世界』なんかもこんなイメージだったのだろうとしばし空想の世界に浸っていたものだ。
日本のビルの再開発も大体が味気ないものになってしまうので歴史的建造物はその原型をあまり崩して欲しくないと個人的には思う。ましてや隣の『グランドリスボア』をみるとまたぞろ景観を台無しにするものが出来る可能性が高いのでマカオ旧市街の旧い町並みを愛するものとしてすごく不安に駆られる。

ともあれ現在の『リスボア』はおそらく『グランドリスボア』のホテルがオープンし次第、営業は休止される予定なので、機会があれば“鳥かご”消滅前に、もう一度訪問したいと思っている。

2008年8月18日月曜日

夏休みは高雄で運動会


北京奥運(五輪)たけなわだが、我が心ははやくも来年の世運に気持ちが飛んでいる。
中国語の世運は文字通り世界運動會の略称だが、世界運動會はと言えばワールドゲームスの中国語表記である。

ワールドゲームスは五輪に準ずる国際総合競技大会で、基本的に五輪で正式種目として採用されていないが、3大陸30カ国以上加盟があり過去3回以上世界選手権が開催されている競技を中心に五輪の翌年にやはり4年に1度開催される運びになっている。すでに過去7回開催されていて2001年には日本の秋田がホスト国となり話題となった。
競技的には、合気道、空手、相撲、綱引き、フィールドアーチェリー、ボウリング、競技ダンス、種目別新体操、ビリヤード、フリークライミング、スカッシュ、ラケットボール、サーフィン、七人制ラグビーなどがあり、それぞれのトップアスリートが世界一を競うのである。

来年の第8回大会は台湾の高雄での開催(7/16~26)。政治的にはチャイニーズ・タイペイという地域参加にとどめられている台湾にしてみれば、国威発揚の意味でも相当力が入るはずだ。
個人的に注目しているのはビリヤード。地元台湾では凄く人気のあるスポーツでジェニファー・チェン、チャン・スーハンといった女子選手たちは美人ぞろいで自分のテレビ番組を持つほど。一方、日本の女子もトッププロの浜西由希子はじめこちらも腕も器量も良しの粒ぞろいで、日台美女決戦は見逃せない。また7人制ラグビーはメーンスタジアムの大会の花である。こちらも強豪ぞろいのなかでカーワン・ジャパンがどこまでやれるか興味は尽きない。

高雄は台湾第2の都市だが、墾丁や台東、花蓮、知本温泉といった風光明媚な東海岸へのアクセスもよく、メシはうまいはネエチャンは…で言うことなし。
空気は悪いわ、人権はないわ、反日だわの北京なんかよりも100倍楽しいイベントであることは間違いないのである。
来年の夏休みは高雄の運動会で決まり!

2008年8月5日火曜日

溢れるバイクから溢れる自転車へ


原油価格の高騰でガソリン代の値上げに悲鳴を上げているのは何も日本に限ったことではない。台湾は世界で一番ベンツの所持者が多い、と聞いたことがあるが自家用車の保有率は世界有数である。日本のように地下鉄や私鉄が張り巡らされているわけではないので、通勤の足として車を使う上班族(サラリーマン)は多いし、公共の乗り物といえばバスかタクシー、そして若者層を中心としたバイクの群れで朝夕の通勤時は決まって渋滞する。ここのところのガソリンの値上げで、新車の購入比率が対前年で30%近く落ち込んだそうである。
それにともなってマイカー通勤族がいっせいに燃費のかからないバイクに鞍替えして、バイクの売り上げはちょうど自動車分を補うかのごとく対前年30%増なのだとか。

いままでだって台北のバイクラッシュは一種名物のように凄まじく、台湾に訪れる日本人は皆一様にびっくりする。幹線道路の朝の信号待ちは何かバイクでデモやっているのかと錯覚するほどだ。訪台した日本明星(スター〉のインタビューでも、台湾の印象を質問されると大体が“バイクが多くて驚いた”と答えるものだから、私が駐在していた頃も“日本人は他に言うことは無いのか”とインタビュアーがかなりムカついていたのを覚えている。

ただでさえバイクがあふれているのに、マイカー組がこぞってバイクに鞍替えしたらと考えるとちょっと恐ろしいものがある。台北の空気汚染も北京ほどではないにせよ昔からひどかったが、バイクの排気ガスは今後ますます大気汚染、温暖化への社会問題を深刻化させることは間違いない。

ただし台湾でも環境問題に敏感になりつつあるのも他の国同様である。また数年前SARSが蔓延した記憶もまだ新しく健康被害への警戒心も高まっている。そこで若者を中心に最近ではバイクもやめて自転車の愛用者が増えだし自転車の売り上げは対前年65%アップと驚異的に伸びているそうだ。元々、世界最大の自転車メーカー「GIANT」がある国だったが、亜熱帯と言う気候的問題もあってあまり乗っている人は見かけなかった。ところがデザインも洗練され、日本で流行ることは何でも流行るお国柄だけに、BMXやスポーツタイプの自転車が人気になっているようだ。

ここ20年間で中国大陸の代名詞だった自転車の通勤風景はすっかり影を潜めたが、今度は台湾の代名詞が自転車の通勤風景になる日もそう遠い将来ではないかも知れない。